ポリシー(歯学部)

ディプロマ・ポリシー

教育の目的

歯学部における教育は、高い倫理観、豊かな人間性、ならびに高い国際性を有する高度な専門知識と臨床能力を備えた歯科医師あるいは歯学研究者を養成することを目指している。また、口腔の機能改善と構築に幅広く貢献し、「口腔から全身の健康に貢献する」ことを実践することができ、国際的にも活躍できる指導的人材を育成することを目的としている。そして、共に研究する研究者や自らが治療に当たる患者と真摯に向きあうことができる、「九州大学歯学部の卒業時に求められるコンピテンシー」を有する者に学士(歯学)の学位を授与する。

参照基準

  • 歯学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度改訂版)(1)※
  • 歯科医学教授要綱 歯科大学学長・歯学部長会議(平成19年改)医歯薬出版

学修目標

「九州大学歯学部の卒業時に求められるコンピテンシー」

1.倫理観とプロフェッショナリズム

  • 1-1)豊かな人間性と生命の尊厳について深い認識を有し、口腔・顎顔面領域の健康を通じて人の命と生活を守る歯科医師としての職責を自覚する。(学修目標A-1)
  • 2)医療人としての法的義務を果たし、高い医療倫理を身につけるとともに、常に患者さん中心の立場に立って安全と安心を最優先する。(学修目標 A-4, B-1)

2.コミュニケーションとチーム医療

  • 2-1)歯科医療の内容を分かりやすく説明し、患者さんやその家族との対話を通じて良好な人間関係を築くためのコミュニケーション能力を有する。(学修目標 A-2, D-4)
  • 2-2)医療チームの1人として相互を尊重すると共に、医療現場で起こる予測できない現象や環境の変化に対応する柔軟性と即応性を有する。(学修目標A-3, D-2)

3.歯科医療の実践

  • 3-1)統合された知識、技能、態度に基づき、自らの診療能力を正しく評価した上で、口腔・顎顔面のみならず、種々の全身的、心理的、社会的状況に対応し、総合的に診療するための実践能力を有する。(学修目標 A-4, B-2〜5, C-1-1, 2, D-1〜5)

4.地域連携と国際貢献

  • 4-1)医療を巡る社会経済的動向を把握し、地域医療の向上に貢献するとともに、地域の保健・医療・福祉・介護および行政等と連携協力する。(学修目標 A-1, B-6, D-3)
  • 4-2)広く世界に目を向け、国際的な視点で歯科医療・歯学の発展と普及に貢献する意欲と態度を有する。(学修目標 A-2, B-6, C-2-1)

5.科学的探求

  • 5-1)科学・医療技術の進歩と改善に資するために研究を遂行し、新しい知を創出する意欲と基礎的素養を有する。(学修目標 A-4, B-6, C-2-1, 2)

6.生涯学習

  • 6-1)歯科医療人あるいは研究者としてのキャリアを継続し、生涯にわたり自己研鑽を継続する。(学修目標 A-4, C-2-1, D-6)

「九州大学歯学部の卒業時に求められるコンピテンシー」を獲得するための学修目標※

A. 主体的な学び・協働

  • 1.   高い倫理観を有し、医療人として節度を保つとともに、自己管理を徹底し、自己犠牲と奉仕の精神を備える。
  • 2.   日本語、ならびに英語による表現能力とコミュニケーション能力を鍛え、広く世界と交流する視点を養う。
  • 3.   自らの健康管理を適切に行い、他者と協働し問題解決にあたる医療チーム・研究チームの一員としてチームを支える精神を培う。
  • 4.   深い専門性と豊かな教養を基盤として、常に自ら問題を見いだして批判的に吟味・検討し、新たな専門的知識・技術を身につける。※※

B 知識・理解

  • 1.   歯科医療および歯科医学研究を実施するための法的根拠、規律、規範、患者の権利、歯科医師の義務について説明する。
  • 2.   人体、特に口腔・顎顔面領域の構造、機能および機能制御機構を巨視的構造レベルから遺伝子・分子レベルまで階層的・統合的に理解し、説明する。
  • 3.   人体ならびに口腔・顎顔面領域に発生する感染症、疾患、形態・機能異常ならびにこれらに伴う障害をあらゆる生物学的側面から説明する。
  • 4.   人体、特に口腔・顎顔面領域の発生、成長発達ならびに加齢変化を巨視的構造レベルから遺伝子・分子レベルまで階層的・統合的に理解し、説明する。
  • 5.   歯科医学研究、歯科診療に用いられる薬剤、材料に対する生体の反応を理解し、それらの効果と為害作用、ならびにリスクを説明し、正しく取り扱う技能を発揮する。
  • 6.   最新の科学情報、歯科医学情報、歯科医療行政関連情報を的確に収集する技能を身につける。

C-1 知識・理解の応用

  • 1.   口腔・顎顔面領域の正常像に対する理解を基盤として、口腔・顎顔面領域に発生する疾患、形態・機能異常ならびにこれらに伴う障害の予防、診断、適切な検査法、診断法、ならびに治療法について説明し、患者の持つ社会的、個人的背景をも考慮しながら治療計画を立案するための知識と基本的な技能を身につける。
  • 2.   患者の訴えを共感的に傾聴し、診療に必要な情報を的確に導出し、それを分析し、最良の診療に向けての的確な行動を取る能力を身につける。

C-2 新しい知見の創出

  • 1.   歯科医学研究チームの一員として、多様な知の交流を行うとともに、自身の知識・技能を活用し、他者と協働して歯科医学の発展に貢献する。
  • 2.   深い専門的知識と豊かな教養を背景とし、歯科医学のみならず、ひろく人文科学、社会科学ならびに自然科学についても興味を持ち、歯科医療の発展に貢献する。

D 知識・理解の実践的場面での活用

  • 1.   各種卒後専門教育プログラムにおいて、各種専門的歯科診療を学ぶための基本的技能を身につける。
  • 2.   口腔・顎顔面の疾患、形態・機能異常、ならびにこれらに伴う障害に対して、患者の持つ社会的、個人的背景をも考慮しながらチーム医療のチームの一員として治療計画を立案する技能を身につける。
  • 3.   歯科医療・医療を巡る社会経済的動向を把握し、地域の保健・医療・福祉・介護および行政と連携協力し、地域医療の向上に貢献する。
  • 4.   科学的根拠に基づいた診断を基盤とした患者に分かりやすい説明により、適切なinformed decisionを形成する歯科医療を実践する。
  • 5.   自らの専門性を客観的に評価し、患者が適切な医療・歯科医療を受けることができるように適切な情報提供を行う。
  • 6.   常に最新の歯科医療技術および知識を探索し、批判的に吟味・検討し、新たな専門的知識・技術を身につけ、可能な限りエビデンスに基づいた歯科医療を生涯にわたり実践する。

※「九州大学歯学部の卒業時に求められるコンピテンシー」とそれを獲得するための学修目標(及び歯学教育モデル・コア・カリキュラムの到達目標)との対応表は、別紙の通り。

※※「九州⼤学⻭学部の卒業時に求められるコンピテンシー」を獲得するための学修⽬標のA-3, A-4 は、それぞれ全学共通の学修⽬標「A-2.(協働)多様な知の交流を⾏い、他者と協働し問題解決にあたることができる」「A-1. (主体的な学び)深い専⾨的知識と豊かな教養を背景とし、⾃ら問題を⾒出し、創造的・批判的に吟味・検討することができる」に相当する。

(1)http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/12/26/1383961_02_3.pdf

カリキュラム・ポリシー

歯学部では、すべての学問領域にわたる多彩な知識を身につけ、研究者あるいは歯科医師として生涯にわたって社会に貢献するために、歯科基礎医学、臨床歯学のみならず、医療系統合教育や医学・工学教育など学際的領域も含め、徹底した集団指導並びに課題解決型グループ学習などにより生涯にわたって学習し続けるアクティブ・ラーナーとなり、診療参加型臨床実習や研究体験を通して「九州大学歯学部の卒業時に求められるコンピテンシー」を達成し、卒業時に求められるコンピテンシー*を獲得することができるカリキュラムを、別表(カリキュラム・マップ)の通り提供する。

全学共通教育

アクティブ・ラーニングを重視する科目(基幹教育セミナー、課題協学)、ICT国際社会に必要な能力の向上を目指す科目(サイバーセキュリティー基礎論)、教養としての言語運用能力習得と異文化理解を目指す科目(学術英語、初修外国語)、専攻教育を通して英語力習得を目指す科目(専門英語)、専攻教育につながる基礎的知識と様々な分野の思考法を学ぶ科目(文系ディシプリン、理系ディシプリン)、ライフスキルの向上を目指す科目(健康・スポーツ)、多様な知識の獲得と学びの深化を目指す科目(総合、高年次基幹教育)などの基幹教育科目を通して、「主体的な学び・協働 (A-3, A-4)」を培う。

1. 倫理観とプロフェッショナリズム(A-1, A-3, B-1)

2年次の歯学総論1(A-3)におけるPBL(少人数グループ学習)、4年次の医療系統合教育科目、「インフォームド コンセント(A-2)」、「臨床倫理(C-2-1)」(少人数グループ学習ならびに講義(高年次基幹教育科目))ならびに医療行動科学(講義)(C-1-2)からリサーチエクスポージャ(少人数グループ学習)(C-2-2)ならびに臨床実習(少人数グループ学習)(D)を経て、医療人、学習者あるいは研究者としての倫理観ならびにプロフェッショナリズムを涵養する教育を実施する。

2.コミュニケーションとチーム医療(A-2, A-3, D-2, D-4)

2年次に行われるチーム学習の基盤となる歯学総論1(A-3)におけるPBL(少人数グループ学習)および歯学総論2~6(C-1-2)のTBL(グループ学習)、4年次の医療系統合教育科目((少人数グループ学習)高年次基幹教育科目)ならびに5年次からの歯科臨床予備実習および歯科臨床実習(少人数グループ学習)(D)において、多職種連携の医療チームならびに学習チームの一員として強い責任感をもってチームに貢献することができるようになるためのチーム学習の機会を提供し、患者やその家族、あるいは研究者とのコミュニケーションを行う能力を醸成する。

3.歯科医療の実践(A-4, B-2, B-3, B-4, B-5, C-1-1, C-1-2, D-1, D-2, D-3, D-4, D-5)

初年次の基幹教育科目から2〜3年次の基礎歯科医学(講義・実習)、3〜5年次の臨床医学・歯科医学(講義・実習)へと段階的な学習を進めながら、2年次からはPBL・TBL(グループ学習)を実施し、5〜6年次で行われる歯科臨床予備実習および歯科臨床実習(グループ学習)へと学習を進め、各段階で統合的な知識や技能を得ることができる一貫教育を実施する。

4.地域連携と国際貢献(A-1, A-2, B-6, C-2-1, D-3)

2年次の歯学総論(講義)(B-2)ならびに歯科臨床実習における地域医療実習(グループ学習)を通して、医療における地域連携や国際貢献を学び、リサーチエクスポージャを通して国際的な研究活動に貢献することの意義を教育する。

5.科学的探求と生涯学習(A-4, B-6, C-2-1, C-2-2, D-6)

2年次から行われるTBL(グループ学習)ならびに4年次、5年次のリサーチエクスポージャ(グループ学習)(C-2-2)などにより課題解決型能動学習の方法を身につけ、将来、歯科医学研究者、あるいは歯科医師になった後も、探究心を持ち、論理的思考を基盤として新たな知を創出する能力を芽生えさせ、新規の歯科医療技術に関する知識、技能を修得する使命感を持って生涯学習を継続する態度を培う教育を実施する。

内部質保証とアセスメント・ポリシー

教育の内部質保証を目的として、各学習段階で目標とする学修目標を達成していることを直接評価(筆記試験、口頭試験、実技試験、観察記録あるいは学生間の相互評価)などを通して評価するとともに、各授業科目に対する授業評価アンケートを用いた間接評価を実施する。臨床実習が行われる5年次の進級判定ならびに臨床実習の修了判定では、共用試験CBT、OSCEならびに、診療参加型臨床実習後客観的臨床能力試験(一斉技能試験・臨床実地試験)の成績も評価対象とし、これらを総合して卒業生の学習成果ならびにカリキュラムの質保証につなげる。

基盤期の評価(1~2年):全専門科目について授業評価アンケートにより学生による授業評価を行う。また、歯学総論の成績を用いて基盤期から発展期にかけての知識の統合的習得度を検証する。

発展期の評価(3~4年):学習到達度試験ならびに共用試験 CBT(5年前期終了時受験)を用いて知識の修得度、OSCE(5年前期終了時受験)を用いて技術の習得度、態度の醸成度を測定し、これに基づいてカリキュラムの適性ならびに学生の到達度を検証する。

統合期の評価(5~6年):学習到達度試験ならびに共用試験実施機構が行う診療参加型臨床実習後客観的臨床能力試験を行い、学生の学習到達度を総合的に検証する。加えて、歯科医師国家試験の結果を検証することにより学生の卒業までに得られた知識領域での学習到達度を検証する。

アドミッション・ポリシー

求める学生像

全学共通

国立大学法人九州大学では、本学教育憲章の理念と目的を達成するために、高等学校等における基礎的教科・科目の普遍的履修を基盤とし、大学における総合的な教養教育や専門基礎教育を受け、自ら学ぶ姿勢を身に付け、さらに進んで自ら問いを立て、創造的・批判的に吟味・検討し、他者と協働し、多様な視野で問題解決にあたる力を持つアクティブ・ラーナーへと成長する学生を求めている。

歯学部

九州大学歯学部では、多方面にわたる学力に優れていることに加え、九州大学教育憲章に基づき、秀でた人間性、社会性、国際性を有し、医療福祉の観点から奉仕精神や利他主義に基づく高い倫理観を有し、チーム医療や課題探求型チーム学習のチームの一員として協調性の高い行動を取り、自律的な学究を指向する人材を求めている。

求める学生像と学力3要素との関係

①知識・技能:高等学校等における基礎的教科・科目の履修を通して獲得される知識・技能。基幹教育科目、ならびに歯学部専攻科目を修学するために必要な理科系、文科系の多方面にわたる十分な基礎知識。

②思考力・判断力・表現力等の能力:多面的に考え、客観的に批判し、自分の言葉で人に伝える資質。チーム医療や課題探求型チーム学習のチームの一員として行動するための協調性を裏打ちするコミュニケーション能力。

③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度:「口腔から全身の健康に貢献する」ことへの関心。多様性を尊重する態度、異なる考えに共感する寛容性。医療福祉の観点から奉仕精神や利他主義に基づく高い倫理観。自らを向上させるため、常に自律的な学究を指向する意欲。医療人に必要な人間性、社会性、国際性を磨くために努力を惜しまない姿勢。

入学者選抜方法との関係

「選抜方法に関する別表」(入学者選抜概要・募集要項の要素)
選抜方法に関する別表(令和4年度以降)

①知識・
技能
②思考力・
判断力・
表現力等
の能力
③主体性を
持って
多様な人々と
協働して
学ぶ態度
一般
選抜
大学入学共通テスト
個別学力検査
個別学力検査 個人面接
総合型
選抜
大学入学共通テスト 講義に対するレポート 調査書
学校
推薦型
選抜
大学入学共通テスト 個人面接 調査書、
志望理由書
個人面接

受験前の検討事項等

1.高等学校在学中に履修した科目に基づく基礎学力は高い到達度を達成していることが望まれる。さらに,大学での学修効果を高めるために必要な対人スキルを身につけておくことが望まれる。

2.歯学部卒業後に歯科医師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない障害を有しており、配慮等によっても補うことが困難な場合、国家試験合格後においても歯科医師免許の交付が困難な場合がある。(歯科医師法施行規則より改変して引用)。具体的には、下記のような障害等があり、配慮を必要とする場合には、歯学部における修学や歯科医師免許の交付が困難な場合があるため、出願前であっても相談を受け付ける。

視覚障害:

  • ・点字による教育を受けている者
  • ・両目の矯正視力がおおむね0.3未満、もしくは視力以外の視機能障害が高度の者のうち、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度の者
  • ・上記以外の視覚障害者

聴覚障害:

  • ・両耳の平均聴力レベルが60デシベル以上の者
  • ・上記以外の聴覚障害者

肢体不自由:

  • ・体幹の機能障害により座位を保つことができない者又は困難な者
  • ・両上肢の機能障害が著しい者
  • ・上記以外の肢体不自由者

病弱:慢性の呼吸器疾患、心臓疾患、腎臓疾患等の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度の者又はこれに準ずる者

発達障害:自閉スペクトラム症(自閉症障害・アスペルガー障害・広汎性発達障害)、限局性学習症(学習障害)、注意欠如多動症(注意欠陥多動性障害)のため配慮を要する者

その他:上記に類する障害を持つ者

ディプロマ・ポリシーイメージ

カリキュラム・ポリシーイメージ

アドミッションポリシーイメージ

九大歯学部Voice

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九大歯学部 Voice#04

「研究者として、臨床医として」

歯学顎口腔外科 助教 前原 隆

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九大歯学部 Voice#03

「患者さんに寄り添える歯科医師になり、
私にしかできない仕事に携わりたい。」

学生歯学部 2年生

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九大歯学部 Voice#02

「歯科医療の未来は明るい」

歯学大学院 4年生