口腔予防医学
若年者におけるう蝕が急激に減少していることは周知の事実です。一方で、高齢者に残る歯の数は年々増加しており、あくまで推計上の話ですが20年後には80歳の国民の全てに20歯以上が残ると予測されています。歯を削り、歯を抜き、そして歯を修復することに歯科医学はいつまで固執するのでしょうか?上記した国民の歯科疾病構造の変動とそれにともなう意識の変化は我々に新しい歯科医療の形を求めているにもかかわらず、未だに旧態依然とした歯科医療システムが主流となっていることは紛れもない事実です。我々の研究室では、将来の口腔疾患の有病状況や歯科医師数などの変化を客観的に捉え、これからの時代に即応した歯科医療システムが如何にあるべきかを求めて、そのために必要な技術開発を目指して研究を進めています。
このような理念に基づき幅広い観点から、主に「口腔常在微生物叢からなる口腔環境が口腔や全身の健康に与える影響の解明」と「環境に対する宿主の応答性が口腔疾患に及ぼす影響の解明」をメインテーマとしています。また、研究手法も細胞や細菌を実験室内で取り扱うラボワークに加え、ヒトそのものを研究対象とした疫学研究を精力的に進めています。また、疫学研究では社会環境因子も含めて考察することで医療保険制度などの社会システムが口腔保健に及ぼす影響を捉えて、社会制度の変革に必要な客観的データを提供することも我々の研究目的の一つと捉えています。
現状の歯科医療に限界を感じている方々と共に、既成概念にとらわれない次世代の歯科医療システムの創成を未来に向かって目指しています。