各研究分野では学生教育や診療を活発に行っているほか、世界をリードする研究も精力的に進めています。
九州大学大学院歯学研究院には20を超える研究分野があり、それぞれの分野で日本一、世界一を目指して教育・研究に励んでいます。この度、それぞれの研究分野における主な教育・研究目標や教育・研究成果の一端を、各分野の自己申告に基づき「1分野1自慢」 として取り纏め、web siteに掲げて学内外に広報することにしました。歯学研究員の学術研究のactivityの一端を御覧ください。
医療技術の進歩により、世界各地で高齢化が進んでいますが、日本は世界でも類を見ない早さで「超高齢社会」を迎えました。その一方でQuality of Life (QOL)の充実を満たす健康寿命の停滞は、医療費および介護費の劇的な増加や医療資源の不足など様々な問題を引き起こしています。歯学医療においても、これまでのう蝕治療からパラダイムシフトがおこり、高齢者歯学・全身管理歯学の充実が強く求められています。このような状況下で、歯学研究院では、得意分野(ブレインサイエンス)の研究をさらに高め、口腔から全身の健康に貢献するために、高齢者の口腔健康 (Oral Health) → 脳機能(Brain Health) → 全身健康(Total Health)の連携を包括的に研究する研究院附属 Oral health・Brain health・Total health(OBT)研究センターを平成28年度に設置し、研究センターの研究成果を臨床の場で実践することを目指しています。
OBT研究センターの特徴は、キラリと光る若手・中堅の研究者を分野ヒエラルキーから抜き出し、プリンシパルインベスティゲーター(PI)として OBT 研究センターに配置し、互いに協力・切磋琢磨によって成果を上げる環境を整備して独り立ちを支援しています。
平成30年4月に新たに1名の准教授を迎え、OBT研究センターを統括する教授1名のほか、准教授5名、助教2名の計8名が所属しています。
このように、我々は高齢者のQOLの向上と健康寿命延伸のために有効な指針や情報を発信して行くことを目指します。
OBT研究センターセンター長
自見 英治郎
近年、急速な医学研究や医療技術の発展により、新規の抗がん治療や再生医療等の医療技術が実用化され、先端医療による地域や国際社会への貢献が進んできました。一方で、歯科医療分野においては、歯科における2大疾患である齲蝕や歯周病への対応に関して、様々な歯科材料や治療技術の開発、行政と連携した予防医学の推進が積極的に行われ、特に小児期における齲蝕に関してはこの20年で半減する状況となってきました。しかし超高齢社会においては、高齢者の口腔機能低下やそれに起因する口腔機能の崩壊(オーラルフレイル)、さらには社会環境や生活習慣の変化に伴う小児期の口腔機能低下が問題となり、これらが誤嚥性肺炎、脳血管疾患、心疾患や肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の発症に寄与することが明らかとなってききました。
これまで歯学研究院では、「口腔健康科学」と「口腔組織の再生・再建医療」を研究の2大プロジェクトとして進めてきた。前者に関しては、加齢変化に伴う口腔機能(oral health)の異常や破綻、またこれらに起因した脳機能(brain health)の異常や口腔疾患と全身疾患との関連性を明らかにし、また歯周疾患によって誘導される脳血管疾患や認知症の発症メカニズムを解明し、咀嚼や嚥下機能異常よって誘導される呼吸器疾患への対応など、全身の健康(total health)を考える研究領域や人材育成の拠点形成(OBT研究センター)を平成28年1月に設置し、多くの成果を上げてきました。
そこで「口腔組織の再生・再建医療」を具体化する目的で、令和3年4月より歯学発生再生(Dent-craniofacial Development and Regeneration:DDR)研究センターを設置しました。
DDR研究センターの特徴は、OBT研究センターと同様に若手・中堅の研究者を分野ヒエラルキーから抜き出し、プリンシパルインベスティゲーター(PI)として DDR研究センターに配置し、互いに協力・切磋琢磨によって成果を上げる環境を整備して独り立ちを支援します。今後、6つの各部門(発生研究、幹細胞研究、細胞分化制御、生体材料、生体親和性、臨床応用)の各分門と、それを支援するバイオリソース管理室、ビックデータ統合管理室を設置し、発生および再生研究に関わるビックデータの管理や、研究プロトコールや研究資材の共通化や共用化により、効率の良い研究環境を提供します。また歯髄等に含まれる幹細胞を応用し、様々な疾患発症解明のためのモデルの作成、さらにこれら幹細胞を用いて、神経変性疾患、脳血管疾患や先天性疾患等に対する再生医療の実用化を目指します。
DDR研究センターセンター長
福本 敏