OBT 主な研究内容
01.妊娠母体の栄養状態による次世代生活習慣病発症メカニズムの解明
超高齢社会を迎えた我が国では、「口腔機能の健康」と「適切な食生活と栄養摂取」が健康寿命延伸とQOL向上のために重要視されています。従来、病気の原因は、主に遺伝や出生後の環境にあると考えられてきましたが、出生前(妊娠母体)の栄養状態も、子の病気の発症に影響を及ぼすことが分かってきました。そこで、研究チームでは、妊娠母体が摂取する各種栄養素やその代謝産物が、子の各種生活習慣病の発症や進行に及ぼす影響を追究しています。
02.アルツハイマー型認知症に性差が生じるメカニズムの解明
アルツハイマー型認知症は女性に多くみられ、その患者数は男性の約2倍であることが知られています。しかし、そのメカニズムはまだわかっていません。慢性炎症(肥満、歯周病など)、閉経や加齢による性ホルモンの変化など、生体恒常性が破綻したときに、脳内の免疫応答の性差がアルツハイマー型認知症発症・進展の性差となって現れるのではないかと考えて研究を行っています。性差が生じるメカニズムを明らかにすることで、より個別性の高い予防戦略の提案と、新しい治療薬開発のきっかけとなることが期待されています。
03.歯周病のアルツハイマー病への関与メカニズム
重度歯周病の罹患は認知機能低下と正相関し、歯周病菌のPorphyromonas gingivalis(Pg)菌の内毒素LPSが認知症の7割を占めるアルツハイマー病患者の脳内に検出されています。我々はPg菌のアルツハイマー病への関与メカニズムの解明に取り組んでおり、これまでPg菌とそのLPSがアルツハイマー病脳病態を誘発し促進する、全身炎症を増大させる、全身でアミロイドβ産生を誘導する、全身のアミロイドβを脳内輸入させるといった多方面的にアルツハイマー病の誘発と病態進行に関与することを明らかにしてきました。歯周病のアルツハイマー病への関与機序を究明し、認知症予防のため有効な情報発信が期待されています。
04.甘味感受性調節に関わる分子・生理基盤の解明
5つの基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)のうち、甘味は生体活動にとって必要不可欠なエネルギー源を示すシグナルであり、肥満や生活習慣病と密接に関連しています。これまでに、甘味感受性の促進および抑制機構について明らかにしてきましたが、甘味受容機構の多くは未だに不明です。甘味感受性の調節に関わる分子・生理学的基盤の全容を解明することで、肥満や生活習慣病の予防法の確立を目指します。
05.唾液腺異常の分子基盤
シェーグレン症候群やIgG4関連唾液腺炎などの唾液腺疾患は、唾液分泌が低下し、口腔粘膜疾患の増加を引き起こすだけでなく、摂食嚥下障害により誤嚥性肺炎を招くことがあります。しかし、その治療法としては唾液分泌促進薬などの対症療法しかなく、根治的な治療法は存在しません。そこで、それらの唾液腺疾患における唾液腺障害のメカニズムを解明することにより、新たな標的分子治療法の確立を目指します。
06.歯周病と全身疾患の相互関連におけるメカニズムの解明
歯周病は口腔内局所の疾患であるとともに、様々な全身疾患に影響を及ぼすことが臨床研究より知られています。また、糖尿病などの全身疾患があると、歯周病が増悪しやすいことも知られています。一方で、歯周病と全身疾患の相互関連についての分子メカニズムの多くはいまだ不明です。そこで、マウス実験と臨床研究の両面のアプローチから、歯周病と全身疾患、とりわけ糖尿病・糖尿病合併症の相互関連における新たな分子メカニズムの解明を目指します。これにより、糖尿病など歯周病が増悪しやすい患者さんにとって効果的な歯周病治療・予防法の確立や、歯周治療による健康増進を目指した幅広い医科歯科連携の構築に貢献することが期待されます。
07.AI・データサイエンスを活用した口腔・脳・全身ネットワークの解明
口腔機能は脳機能や全身の健康と密接に関連していますが、その相互作用を客観的に評価する手法は十分に確立されていません。そこで、AIおよびデータサイエンスを基盤として、口腔情報・生体情報から脳機能や全身状態を評価する研究を進めています。特に、心拍変動(Heart Rate Variability:HRV)の時系列解析による自律神経機能の評価や、オレキシンをはじめとする脳内神経伝達機構と口腔機能との関連を解明するとともに、生成AIを活用したメモリアルアバターによる認知症予防・認知機能支援技術の開発に取り組んでいます。歯学・医学・情報科学を融合し、口腔を起点とした新たな予防・診断技術の創出を目指します。
08.閉経後骨粗鬆症と体重増加の共通分子機構の解明
閉経後女性ではエストロゲン欠乏により骨密度低下(骨折リスク増大)と内臓脂肪増加(メタボ、乳がんリスク上昇)が起こり、健康寿命延伸の課題です。既存研究では骨粗鬆症に重点が置かれる傾向があり、両者の共通メカニズムは未解明です。閉経後骨粗鬆症動物モデルを用いてエストロゲン欠乏により、骨・脂肪組織でNF-κBの活性化が起こることを明らかにしました。今後この共通機構を解明することで閉経後の骨量減少や体重増加の予防や治療薬探索を目指します。







